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春と聞いてドイツ人が真っ先に思い浮かべる野菜は何でしょうか?
ジャガイモ?キャベツ?答えはアスパラガスです。
(もちろんキャベツもジャガイモも食べますが)
4月終わりごろから(新ジャガの終わる頃)6月終わりごろ(さくらんぼの色づく頃)にかけて、アスパラガスのシーズンです。
レストランではスペシャルメニューが並び、市場には産地直送、掘りたてのアスパラガス(だけではありません、外国産もあります)が山のように詰まれており、スーパーには欧州各国産のアスパラの箱がこれでもかと積まれ、主婦達は2kg、3kgとまとめて買って行きます。
こちらで主に食べられるのは日本でもよく見かけるグリーンアスパラガスではなく真っ白や少し紫がかったホワイトアスパラガスです。
ホワイトアスパラガスはグリーンアスパラとは違って皮を全部むいて食べます。一番伝統的な食べ方は、たっぷりのお湯をわかして少量の塩、砂糖をひとつまみいれて好みでバターをひとかけら加え、茹で過ぎないように気をつけて茹で汁をこし、笊にあげます。1kgのアスパラが大体20分もあれば茹で上がります。茹で上がったものに溶かしバターを掛けたり、オランデーズソース(バターたっぷりのホットマヨネーズといったところでしょうか、レモン汁、卵黄、バターを合わせた温かいソースです。)と合わせたり。付け合せはゆでたジャガイモに塩をふったものがお勧めです。
私の好きな食べ方は生ハムにアスパラをくるりと巻いて食べるというもので、先日友人とアスパラを食べに出掛け、上の食べ方がしたいとハム付きを注文したら、生ではないハムが出てきてちょっとがっかりしてしまいました。むいた皮と食べられない下の硬い部分を使ったアスパラの茹で汁で作るスープは絶品です。レストランでは贅沢にバターをふんだんに使ったり生クリームを入れたりして立派なメニューの一つになっています。
ただ、アスパラを食べた後お手洗いにたちますと、尿がかなりきつい匂いになります。匂いになれていない日本人が食後に用を足して自分は病気だと思い込んで病院に駆け込んで少し恥ずかしい思いをしたという笑い話になり損ねたような話もあります。
野菜は何でも生で食べてしまうドイツ人、もうポロネギや白菜の生くらいでは驚きませんが先日友人の家で御馳走になったとき、アスパラを生でも勧められたのにはちょっと閉口しました。生で食べると激しく苦くちっとも美味しく感じなかったのですが、別の友人らに聞いたところ「さすがにアスパラは生のままじゃ食べないよ」と力説され、お腹は大丈夫かと心配されました。件の友人が特別だったのでしょうか。一応調べてみますとアスパラガス専門のHPには生でも食べられないことはないとあり少し安心しました。
栄養価も高く、アスパラギン酸、カリウム、リン、カルシウムなどが豊富で、国民的人気を誇るアスパラですが、今は少し不安な状態にあります。
需要は下がっていないのに、一昨年ごろから収穫時の深刻な労働力不足に悩まされているのです。アスパラだけではなく、イチゴも同じ状況です。
東欧、主にポーランドからの季節労働者が少なくなり、労働省からは「収穫期の手伝いにはドイツ人の失業者を雇うように」とお達しがありました。しかし、低賃金の肉体労働はやりたがらない失業者が多く、募集しても集まらない、あるいは来ても重労働過ぎて途中で逃げ出すのが大半、というのが現状のようです。
ポーランドの労働者は近年EUの加盟、自国の経済の好転などにより、出稼ぎに国を出るものが少なくなり、出るとすれば賃金の高い好条件のそろっているオランダ、イタリア、アイルランド、英国などに仕事を求めるようになっており、深刻な労働力不足に農家はポーランド人に代わってルーマニア人、ブルガリア人労働者と契約を結んだり、新しい機械を購入したり、主婦や高齢者を雇ったりして、埋め合わせに懸命だそうです。
どうしてここまでして低賃金に抑えたいのかというと、「消費者がこれ以上値段を上げると買わないから」というのが一番大きな理由のようです。美味しければ多少高くとも食べる回数を減らせばなんとかなるのではないかと思ってしまいました。
わざわざアスパラをゆでるためだけの専用鍋のあるドイツの家庭では難しい相談なのでしょうか・・・。
業界はいろいろ大変なようですが、一消費者としては今までどおり美味しいアスパラガスが食べたいなぁと暢気に思う今日この頃です。
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ちょっと前の事になるのですが、昨年秋に日本に上陸した映画いのちの食べかたをごらんになった方もいるかと思います。
オリジナルタイトルはドイツ語で、Unser täglich Brotと言い、オーストリア人の監督Nikolaus Geyrhalterが2005年作成した作品です。同監督がヨーロッパ各国の農業現場を見て回って撮影し監修しています。
ナレーションや音楽、コメントなど一切なく、家畜の声、現場に響く音だけの作品です。映像が美しく大変魅力的なドキュメンタリー映画ですが、それに加えて話題になったのは、農業現場に密着した内容です。
一般の人ではなかなか目にする事ができない家畜の屠畜シーンや農薬散布現場、豚の虚勢や鶏のくちばしを切るデビーク、マスの自動はらわた除去機など、大変印象的です。
日本ではあまり一般的ではないのですが、季節労働者が外国からおんぼろのバスに揺られてやってくる様子や、上半身裸の屈強な男がはしご付きワゴンの上で黙々とパプリカを収穫する様など、農業現場で働く人の表情などは考えさせられるものがあります。
まだご覧になっていない方もいらっしゃるでしょうから内容に触れるのはこれぐらいにしておきますが、いわゆる農業や現場に対する露骨な批判や意見、映画の中で無数に繰る返される生産と管理に関する解説が一切なく、あくまで「農業の現実」を完全に写し取ったような作品で、おかしな表現かもしれませんが、どのシーンを見ても感動を覚えます。
普段食事をしていて、あたりまえに肉を食べたり野菜を食べたりしていますが、命を食べているのだという感覚は漠然と薄まってしまいがちです。 こうして映像で美しく表現されると、私達の食べ物がどうやって作られているのか、どうやって食卓へ運ばれてくるのか、自然と興味が湧くものです。その上、色々な切り口で表現される農業現場を見ていると色々な考えが浮かんできます。
それは、ただ目の前の食品に対する感謝ではなく、人間の営みの巨大さ、激しさ、農業の現状と進歩、或いは映像からは見えない一人一人の人間達の生活観さえも感じ取られるのではないでしょうか。
往々にしてこのような社会実態をテーマにした作品は評価を受けやすいものかもしれません。しかし、前評判や知識などを抜きにして、今一度、農業と食べる事に真正面から向き合う良い機会を与えてくれる作品ではないかと思います。
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今から20年も前、長野の田舎で良く目にした水田を住処にしている生き物達は、今もいるのでしょうか?
よく農業の役割のうちに「自然保護」というものが挙げられます。
その代表的な例として、水田の保水・洗浄効果、水生生物たちの生息域などがあり、そういった意味で農業は自然保護に役立っているとしています。
しかし、世界全体を見たときに、「農業」と言うのは「自然破壊」と大変強い結びつきがあることを思い知らされます。そして世界的には、農業は自然破壊をしている産業です。
いきなりこう書かれても納得できない人もいるでしょう。
例えば、熱帯雨林で頻繁に行われる焼畑農業。森林を焼いて開墾し、そこで作物を育てる農業です。熱帯の土地はすぐに土壌が悪くなるので場所を変えてまた焼畑しなくてはならず、その度に新しい森林が対象となります。熱帯雨林は植物の生長が早いと言っても、生長を超える勢いで焼畑すれば大きな自然破壊になります。そして、今も広大な森林で自然破壊が進んでいます。
あるいは、畜産業の家畜糞尿による地下水汚染。狭い地域に大量の家畜を飼育することで処理しきれなくなった牛や豚、鶏などの糞や尿が垂れ流しになり、それが地下へ浸透して、飲み水となる地下水や地表を流れて河川を汚染します。ヨーロッパ諸国ではこれが大変な問題であり、それが故に大変厳しく家畜の飼育頭数を制限したり糞尿の処理について法律があります。
遺伝子組み換え作物(GM作物)が一般的に世界で利用されるようになり、系統の似た種族の植物と交雑してしまい、自然の摂理が狂うのではないかと懸念されています。例えば、特定の昆虫が死滅する遺伝子を持ったイネ科のGM作物が自然界の雑草と自然交配してしまい、それを食べた昆虫が死んでしまう可能性がないわけではありませんし、そもそも自然界に存在しなかった遺伝子型が広がる事も自然破壊といえなくはないでしょう。
農業とは元々自然の流れに逆らって人間のために役立つ自然を抜き出した産業です。ですから人間にとって大変都合のよい状態に保たれています。
近年の農業(特に欧州の農業)は、それだけでは駄目だ、自然にも目を向けるべきだという考えが広がり、やっと自然と共存できる形を模索し始めているのです。
それは即ち、人間の将来にも深くかかわってくるのです。
森林を焼き破壊するばかりの農業ではいつかできなくなります。
逆に、もし将来にも繰り返す事ができるのならば、焼畑農業も人間が生活するための手段として評価されても良いかもしれません。
家畜糞尿による水資源汚染も、結局、過剰な農業生産が引き起こすもの。しっかり管理していく必要があるでしょう。
このように、将来にもずっと問題なく営んでいける農業を持続可能な農業(Sustainable Agriculture)といいます。
さて、今回は人間の立場から考えて書き進めてきました。
自然保護というのは「自然」を「保護」するので、今回の観点は、持続可能な農業が中心だったかもしれませんね…。
日本の田んぼはこれからどうなっていくのでしょうか?
これからもずっと人間にとって有益な農業を続けていけるでしょうか?
少なくとも、20年前に田んぼで見かけた生物達が、今も同じ生活をしていない事だけは確かだと思います。
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「カルシウムがあるから」
「栄養があるから」
「健康に良いから」
などの理由がまず挙がり、その次に
「好きだから」
「おいしいから」
という理由が挙げられています。
ドイツの牛乳と日本の牛乳、どちらの方が美味しいかは、それぞれの好みによるのでしょう(笑)
国産牛乳の生産調整(牛乳の生産量を限定すること)がある上、ここのところの国際的な穀物価格の上昇、加えて頭打ちの乳価(牛乳の生産者価格)が酪農業界に悪い影響を与え、結果としてバターにするための牛乳が足りなくなるということです。
この事態を解消するためには、外国から乳製品を輸入したり、牛乳の生産量を増やしたり、酪農家の得る所得を増やすために乳価を上げたりする必要があります。
バターを増やすために酪農家の収入を増やすと言うのは、風が吹けば桶屋がもうかる的な雰囲気もありますが、生産者に元気がなければ十分な生産物は得られないという事と理解してください。
ところで、ドイツでは昨年の初夏から乳価が急激に上昇し、一時は一部乳業会社で生乳(搾って何も加工していない牛乳)1kg当り28セント台にまで値下がりしていたのに、8月には45セントに達しました。その後も暫く1kg当り50セント近い値を保っていましたが、最近は落ち着いて47セントぐらいになっているようです。
酪農をご存じない方は、
「28セントから50セントに牛乳の値段が上がってもたいした額じゃないじゃないか!?」
とお思いになるかもしれませんので説明を加えます。
一頭の雌牛が一日に生産する牛乳は大体20kgから35kgほどです。仮に一日30kgの牛乳を出すとしましょう。
そのような牛を30頭飼っている酪農家が、1kg28セントで1ヶ月(30日)牛乳を生産した場合、
・雌牛30頭×牛乳30kg×生産日数30日×乳価28セント= 756000セント
つまり7560ユーロ(円換算すると120万円ぐらい)
それが、50セントになったということは…
・雌牛30頭×牛乳30kg×生産日数30日×乳価50セント= 1350000セント
つまり13500ユーロ(円換算すると216万円ぐらい)になります!
一ヶ月でもこれだけの差が出てくるのに一年ともなれば酪農家の所得は大きく違ってきます。
計算式は省きますが、1セントの差が出ても月々270ユーロ(約4万円)もの所得差があり、1セントを笑うものは一セントに泣くことになります。
ところで、人によっては、
「なんだ、酪農家めちゃくちゃ稼いでるじゃないか!」
と思うかもしれませんが、牛の餌代、管理代、施設の費用、燃料費など支出も大きいのでめちゃくちゃ稼いでる事にはならないのです。
そして、酪農業がビジネスとして魅力的でなければ、今後もさらに生産者が減っていくわけで、そうなればバターどころか牛乳も手に入りづらくなっていくのではないでしょうか…。
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